平成30年11月9日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
平成29年(行ウ)第17号 海外渡航費等公金返還義務付け(住民訴訟)請求事件(以下「甲事件」という。)
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平成30年(行ウ)第2号 海外渡航費等公金返還義務付け(住民訴訟)請求事件(以下「乙事件」という。)
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平成30年(行ウ)第6号 海外渡航費等公金返還義務付け(住民訴訟)請求事件(以下「丙事件」という。)
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口頭弁論終結日 平成30年7月20日
判決
当事者の表示 別紙当事者目録のとおり
主文
1. 本件各訴えをいずれも却下する。
2. 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
第2 事案の概要
ア 原告らは、いずれも沖縄県内に住所を有する者である。
イ 被告は、沖縄県知事として、法242条の3に基づき、不当利得の返還金の支払を請求する権限を有する機関である。
ウ 翁長前知事は沖縄県知事の職にあった者、岸本秘書は沖縄県知事秘書の職にあった者、阿波連主査は沖縄県秘書課主査の職にあった者である(いずれも平成27年9月21日当時)。
ア 沖縄県は,翁長前知事に対し,本件演説に係る出張のための旅費として、平成27年9月18日には交通費等の概算払で95万54355円を、同年11月2日には精算払で3500円をそれぞれ支出した(以下「本件支出1」という。甲5の4~8、乙1の4~9)。
イ 沖縄県は、岸本秘書に対し,本件演説に同行するための出張旅費として、平成27年9月1 8 日には交通費等の概算払で66万3517円を、同年11月2日には精算払で3500円をそれぞれ支出した(以下「本件支出2」という。)ほか、同日、精算払で2万5000円を支出した(以下「本件支出3」という。甲5の9~12、13の2)。
ウ 沖縄県は、阿波連主査に対し、本件演説に係る出張に同行するための旅費として、平成27年11月2日、64万5017円(以下「本件支出4」という。)及び2万5000円(以下「本件支出5」といい、本件支出1ないし5をまとめて「本件各支出」という。)をそれぞれ支出した(甲5の13~16、13 の1)。
(ア) 甲事件原告らは、平成29年10月13日、沖縄県監査委員に対し、本件演説のための費用として沖縄県から支出された公費約227万円のうち、翁長前知事に対して交通費及び宿泊費として支出された約96万円(本件支出1)につき、沖縄県知事から翁長前知事に対してその返還を求めることを請求した(甲1の1~5。以下「第1次住民監査請求」という。)。
(イ) 沖縄県監査委員は。平成29年10月27日,第1次住民監査請求は、本件支出1の日(平成27年9月18日及び同年11月2日)から約2年ないし約1年11か月を経過した後にされたもので、法242条2項本文所定の請求期限を経過しており、また、同項ただし書にいう「正当な理由」があるとはいえないことを理由として、これを却下した(甲1の1~5)。
(ウ) 甲事件原告らは、平成29年11月21日、甲事件に係る訴えを提起した。
(ア) 原告らは、平成29年12月21日、沖縄県監査委員に対し、本件演説に同行した岸本秘書及び阿波連主査に対して交通費等の名目で沖縄県から支出された合計130万8534円(本件支出2のうち概算払分及び本件支出4の合計額)につき、沖縄県知事から上記2名に対してその返還を求めること及び翁長前知事に対して同額の賠償を求めることを請求した(甲3.以下「第2次住民監査請求」という。)。
(イ) 沖縄県監査委員は、平成30年1月10日、第2次住民監査請求は、本件支出2のうち概算払の日(平成27年9月18日)からは約2年3か月、本件支出4の日(同年11月2日)からは約2年1か月を経過した後にされたもので、法242条2項本文所定の請求期限を経過しており、また、同項ただし書にいう「正当な理由」があるとはいえないことを理由として、これを却下した(甲4、弁論の全趣旨)。
(ウ) 原告らは、平成30年2月6日、乙事件に係る訴えを提起した。
(ア) 丙事件原告らは、平成30年3月22日、沖縄県監査委員に対し、本件演説に同行した岸本秘書及び阿波連主査に対して航空券変更手数料及び払戻手数料の名目で沖縄県から支出された合計5万円(本件支出3及び5の合計額)につき、沖縄県知事から上記2名に対してその返還を求めること及び翁長前知事に対して同額の賠償を求めることを請求した(甲14。以下「第3次住民監査請求」といい、第1次ないし第3次住民監査請求をまとめて「本件各住民監査請求」という。)。
(イ) 沖縄県監査委員は、平成30年4月17日、第3次住民監査請求は、本件支出3及び5の日(いずれも平成27年11月2日)から約2年4か月を経過した後にされたもので、法242条2項本文所定の請求期限を経過しており、また、同項ただし書にいう「正当な理由」があるとはいえないことを理由として、これを却下した(甲15、弁論の全趣旨)。
(ウ) 丙事件原告らは、平成30年5月16日、丙事件に係る訴えを提起した。
(原告らの主張)
法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は、住民において相当の注意力をもって調査を尽くせば客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に同請求の対象となる行為の存在又は内容を知ることができたか否か、及び知ることができたと解される時から相当な期間内に同請求をしたか否かにより判断されるところ、前者にいう「行為の存在又は内容を知る」とは、当該行為が違法又は不当であることを知ることをも含むと解するべきである。
本件各支出の違法性は、国連総会決議によれば沖縄県知事には本件会議への参加資格がなかったことから,翁長前知事による本件演説は公務たり得ず、公金支出の対象ではなかったということにあるが、原告らが沖縄県知事に本件会議への参加資格(発言資格)がないことを知ったのは、平成29年9月11日付けの新聞報道が初めてであり、これを調査の契機又は端緒として本件各支出の違法性を把握し、「行為の存在又は内容」を知ったものである。
そして、甲事件原告らは、上記新聞報道の後、直ちに国連総会決議の内容を調査した上、平成29年10月13日、本件支出1につき第1次住民監査請求をした。また、原告錦古里は、同日、沖縄県に対して公文書開示請求をし、これに対する同月26日付け公文書部分開示決定によって明らかとなった本件支出2及び4にづき、原告らは、同年12月21日、第2次住民監査請求をした。さらに、上記公文書開示請求に対しては、平成30年3月15日付けで追加開示決定があり、これによって明らかとなった本件支出3及び5につき、丙事件原告らは、同月22日、第3次住民監査請求をした。このような原告らの対応に照らせば、本件各住民監査請求が、行為の存在又は内容を知ることができた時から「相当の期間内」にされたことも明らかである。
以上によれば、本件各住民監査請求にはいずれも、請求期間を徒過したことにつき「正当な理由」があるというべきである。
(被告の主張)
原告らが本件各支出の違法事由として主張するところは、本件演説が本件会議の参加資格を有するNGOからその発言枠を貸与されて実現したもめであるため、本件演説に係る費用は本来、上記NGO又は翁長前知事個人が負担すべきものであったにもかかわらず,沖縄県が負担したというものである。しかし、翁長前知事が本件演説を行ったこと及び本件演説はNGOが翁長前知事に対して発言枠を貸与することにより実現したことに関しては、本件演説の前後にわたって報道されており、また。平成27年第7回沖縄県議会においてもこれらの点に関する質問及び答弁がざれ、その内容は遅くとも同年12月2日には一般に閲覧することが可能な状態に置かれていた。よって、遅くとも同日以降は、住民が相当の注意力を尽くせば、本件各支出の存在及びその違法性を基礎づける事実について認識し得たといえる。
そうすると、原告らにおいて、本件各支出の日(最も早い日で平成27年9月18日)から1年以内に住民監査請求をすることに何ら支障はなかったといえるから、同請求期間を徒過したことにつき「:正当な理由」はないというべきである。
したがって、本件各住民監査請求はいずれも不適法であり、本件各訴えはいずれも、訴訟要件である適法な住民監査請求を前置せずに提起された不適法な訴えとして、却下されなければならない。
(原告らの主張)
前記(1)のとおり、国連総会決議によれば、沖縄県知事には本件会議への参加資格(発言資格)がなかっためであるから、翁長前知事が行った本件演説が神縄県知事としての公務であると解する余地はない。翁長前知事が、NGOが有する本件会議での発言枠を貸与されて本件演説を行ったこと、上記NGOは「沖縄人を先住民として認めさせる運動」を続けてきた団体であること、本件演説は「沖縄人が先住民である」との上記NGOの見解に則った内容で、上記見解は沖縄県の公式見解とは乖離したものであることなどに照らせば、本件演説には合理的な行政目的も客観的な公務性もなく、翁長前知事が、上記NGOの一員として行った私的な行為であると解するべきである。
したがって、翁長前知事のかかる私的な行為に対してされた本件各支出は、公金支出の根拠を欠くもので違法である。
(被告の主張)
一般に、地方公共団体の長は、その権能を適切に果たすために合理的な必要性があるときは、自ら、国内又は海外に出張を行うことができ、出張目的や出張先、出張内容等の決定については、原則的に長の合理的な裁量に委ねられているものであるから、出張の必要性や出張内容についての長の判断は、本件演説及びこれに係る翁長前知事らの出張が、その目的、態様等に照らして、社会観念上著しく妥当性を欠いていると認められる場合に限り、上記裁量を逸脱、濫用したものとして違法となる。
本件演説は、辺野古新基地建設問題についての沖縄県の立場を広く国際社会に理解してもらうという行政上の目的から行われたものである。また、本件演説に係る翁長前知事らの出張の旅程には、私的な観光旅行と目されるような内容はなく、翁長前知事の説明内容や活動内容は、国内外で広く報道され、沖縄県ホームページにもその内容を掲載するなどしている。
以上の目的、態様等によれば、本件演説及びこれに係る翁長前知事らの出張を行うとした翁長前知事の判断は合理的かつ適切な裁量判断であり、適法な旅行命令及びこれに基づく本件各支出もまた適法というべきである
(原告らの主張)
本件各支出はいずれも違法であるから、翁長前知事らの利得にはいずれも法律上の原因がない。
被告の主張に対し、私的な旅行に関して発せられた旅行命令は違法かつ無効であるから、無効な旅行命令に基づく沖縄県職員の出張もまた公務性を欠くというべきである。
(被告の主張)
争う。翁長前知事らは、適法な旅行命令に従って出張し、旅費の支払を受けたものである。
岸本秘書及び阿波連主査は、沖縄県職員として旅行命令に従う義務を負っていたところ、本件演説への同行についても旅行命令に従って行ったものであり、かつ両名の旅程には私的な観光旅行と目されるような内容はないから、その費用について沖縄県の公金から支払を受けたことに法律上の原因があることは明らかである。
第3 当裁判所の判断
(1) 国連総会における平成18年3月15日決議によれば、国連人権理事会の会議へのオブザーバーの参加及び協議資格は、非理事国政府代表者、国際機関代表者及び国連経済社会理事会に認められた協議資格を有するNGOに与えられていた(甲8ないし10)。
(2)
ア 琉球新報は、平成27年7月23日、翁長前知事が本件会議において辺野古への基地建設問題について演説する見通しがついたこと、具体的には、国連との協議資格を有するNGOである「市民外交センター」が、民間団体である「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」(以下「島ぐるみ会議」という。)などからの要請を受け、本件会議での発言時間を翁長前知事に貸与する意向であることなどを報道した(乙2)。
イ 翁長前知事は、平成27年9月21日、本件会議に出席し、本件演説を行った。
ウ 沖縄タイムスは、平成27年9月22日、翁長前知事が、本件会議において、市民外交センターの発言枠を譲り受け、議長の許可を得た上で沖縄県知事として本件演説を行ったことなどを報道した(乙3)。琉球新報も、同月24日、同旨の報道をした(乙4)。
エ 平成27年9月18日から同年10月16日までの間に開催された同年第7回沖縄県議会定例会においては、本件会議における発言の機会は各国の代表者又はNGOに対して与えられるものであるため、翁長前知事が発言するためにはNGOの発言枠を借りなければならなかったこと、翁長前知事はNGOである市民外交センターから発言枠を借りて本件演説を行ったことといった本件演説の経緯や、内容の相当性、本件演説が公費で行われたにも関わらずその後の記者会見にNGOが同席したことなどについて質疑応答がされた(乙5)。
同定例会の会議録は、平成27年11月1日に発行され、遅くとも同年12月2日以降は一般に閲覧可能な状態に置かれた(乙6、7の1・2)。
オ 産経新聞は、平成29年9月11日、本件演説に関し、国連総会決議によれば沖縄県知事としての立場では本件会議への参加資格は認められていなかったこと、そのため、翁長前知事はNGOである市民外交センターから発言枠を譲り受けて本件演説をしたこと、上記発言枠の譲渡は民間団体である島ぐるみ会議による調整によって実現したこと、これらの事実によれば、本件演説の費用は、上記NGO又は民間団体が負担するか、翁長前知事が自ら負担すべきであったとする見解などを報道した(甲2。以下「産経新聞報道」という。)。
(3)
ア 原告錦古里を含む甲事件原告らは、平成29年10月13日、第1次住民監査請求をした。
イ 原告錦古里は、平成29年10月13日、沖縄県知事に対し、翁長前知事及び本件演説に同行した沖縄県職員に対して支出され、た公金227万円の内訳及びその詳細、上記沖縄県職員の氏名がわかる文書並びに本件演説に係る企画書、請求書及び支出命令書の開示を請求した(甲きの1.以下「本件開示請求」という。)。
ウ 沖縄県知事は、平成29年10月26日、本件開示請求に対し、本件各支出の内訳及び詳細並びに職員の氏名がわかる文書として、「知事の国連人権理事会本会議出席等について(概要)」及び「訪欧(スイス・英国)日程」との件名の公文書のほか、「旅行命令(依頼)簿兼旅費内訳書」及び「旅費請求書兼支出調書」との件名の公文書(本件支出1、2及び4にかかるもの)を開示する旨決定し、同月27日、原告錦古里にこれらを開示した(甲5の1~16、乙1の1~9)。
エ 原告らは、平成29年12月21日、第2次住民監査請一求をした。
オ 沖縄県知事の職務代理者である沖縄県副知事は、平成30年3月15日、本件開示請求に対する追加開示分として、「旅費請求書」及び「支出負担行為兼支出調書」との件名の公文書(本件支出3、5にかかるもの)を開示する旨決定し、同月16日、原告錦古里にこれらを開示した(甲11ないし13の2)。
カ 丙事件原告らは、平成30年3月22日、第3次住民監査請求をした。
(1) 法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に住民監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所平成10年(行ツ)第69号、同第70号平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。
ア そこで、まず住民監査請求をするに足りる程度に本件各支出の存在及び内容を知ることができたと解される時について検討する。
(ア) 前記認定事実(2)ア、ウ及びエのとおり、翁長前知事が本件会議において市民外交センターからその発言枠を借りて本件演説を行うこと又は行ったことは本件演説の前後にわたって報道されていた上、沖縄県議会定例会においては、本件会議における発言の機会は各国の代表者又はNGOに対して与えられるものであり、翁長前知事が発言するためにはNGOの発言枠を借りなければならなかった旨の答弁や、本件演説が公費で行われたことについての指摘(いずれも乙5〔194頁〕)がされ、同定例会の会議録は遅くとも平成27年12月2日以降は沖縄県の住民において閲覧可能な状態に置かれていたことが認められる。
これらの事情に照らすと、遅くとも平成27年12月2日以降は、沖縄県の住民が相当の注意力をもって調査すれば、本件演説の非公務性を基礎づける事実として原告らが主張する事実、すなわち、沖縄県知事には本件会議における発言資格がなかったこと及び本件演説は市民外交センターの発言枠を借りてされたことを知ることができたと認められる。したがって、遅くとも平成27年12月2日以降は、原告らにおいて、翁長前知事による本件会議への出席及び本件演説にかかわる経費の支出に違法又は不当な点があると考えて住民監査請求をするに足りる程度に、本件各支出の存在及び内容を知ることができたと解される。
原告らは、平成2旧年9月11日の産経新聞報道を調査の契機又は端緒として本件各支出の違法性を把握し、その存在又は内容を知った旨主張するが、上記説示に照らし採用できない。
(イ) ところで、本件支出2ないし5については、その支出の相手方(沖縄県職員の氏名)や個々の費目、年月日、金額等は、原告錦古里が本件開示請求をしたことにより初めて原告らに判明したもので、前記認定事実(2)ア、ヴ及び工の報道や会議録等からは、その個々の内容が明らかになっていたとはいえない。
しかし、住民監査請求においては、その対象が特定されていること、すなわち対象とする財務会計上の行為が他の事項から区別し特定して認識することができるように個別的、具体的に摘示されていることを要するところ、対象となる当該行為が複数であるが、当該行為の性質、目的等に照らしこれらを一体とみてその違法性又は不当性を判断するのを相当とする場合には、対象となる当該行為とそうでない行為との識別が可能である限り、個別の当該行為を逐一摘示して特定することまでが常に要求されるものではない(最高裁判所平成16年(行ヒ)第312号平成18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1841頁)。
そして、県知事の国際会議への出席及び演説自体が公務ではなく違法又は不当であり、これにかかわる出張旅費の支出全体が違法又は不当であるとして住民監査請求をするときは、通常、当該会議あるいは演説を特定することにより、これにかかわる複数の出張旅費の支出を個別に摘示しなくても、対象となる財務会計上の行為とそうでない行為との識別は可能であるし、当該会議あるいは演説にかかわる出張旅費の支出がすべて違法又は不当であるという以上、これらを一体として違法性又は不当性を判断することが可能かつ相当であるということができる。したがって、そのような場合に、当該会議あるいは演説にかかわる個々の支出(本件支出1ないし5)を一つ一つ個別具体的に摘示しなくても、住民監査請求の対象の特定が欠けることにはならず、「本件会議への出席あるいは本件演説にかかわる出張旅費の支出の全体」として、本件各支出について一体として住民監査請求をすることができたものと解される。
そうすると、原告らは、遅くとも、翁長前知事の本件会議への出席と本件演説が公費により行われたことを知り得た平成27年12月2日の時点において、本件支出2ないし5についても、本件各住民監査請求をし得たものと解される。
原告らは、本件支出2ないし5につき、公文書開示決定によって個別め支出が明らかになった時点をもって、財務会計上の行為の存在又は内容を知り、住民監査請求ができるようになった旨主張するようであるが、上記説示に照らし採用できない。
イ 次に、本件各住民監査請求が、上記のとおり住民監査請求をするに足りる程度に本件各支出の存在及び内容を知ることができたと解される時(平成27年12月2日)から相当な期間内にされたかどうかについて検討するに、本件各住民監査請求のうち最も早期にされた第1次住民監査請求の請求日は平成29年10月13 日であり、その時点で既に平成27年12月2日から約1年10か月が経過していたことからすれば、本件各住民監査請求は、いずれも相当な期間内にされたものとは到底いえない。
(3) 以上によれば、本件各住民監査請求についてはいずれも、住民監査請求期間が経過した後にされたことについて「正当な理由」があるとはいえない。
したがって、本件各訴えは、いずれも適法な住民監査請求を前置しないもので、不適法といわざるを得ないから、その余の争点(争点(2)及び(3))について検討するまでもなく、却下すべきである。