沖縄県政の刷新を求める会

県警検問控訴断念慰謝料返還訴訟

県警検問控訴断念慰謝料返還判決文判決文

判決文

主   文

  1. 原告らの請求を棄却する。
  2. 訴訟の費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1 当事者が求めた裁判

  1. 請求の趣旨
    被告は、亡翁長雄志相続人に対し、31万9849円及びこれに対する平成30年6月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
  2. 本案前の答弁
    本件訴えを却下する。
  3. 本案の答弁
    原告らの請求を棄却する。

第2 事案の概要

 平成30年1月16日、沖縄県に対し、沖縄県警察本部(以下「沖縄県警」という。)指揮下の警察官が行った制止行為及び撮影行為は違法であるとして、損害賠償金30万円及び遅延損害金の支払を命じる第一審判決が言い渡されたところ、当時沖縄県知事であった亡翁長雄志(以下「翁長前知事」という。)は、控訴を行わないこととし、上記判決は控訴期間経過により確定したことから、同年2月28日、沖縄県が損害賠償金として遅延損害金を含め31万9849円を支出するに至った。なお、翁長前知事は、本件訴訟係属中の平成30年8月8日に死亡している。
 本件は、沖縄県民である原告らが、被告に対し、翁長前知事が控訴を断念する判断をしたことや、これに基づき沖縄県が損害賠償金を支出したことは違法であるとして、地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき、翁長前知事の相続人に対し、31万9849円及びこれに対する不法行為の後の日である平成30年6月29日(本件訴状送達の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める不法行為に基づく損害賠償請求をすることを求める住民訴訟である。

  1. 前提事実(当裁判所に顕著な事実、当事者間に争いがない事実、並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
    • (1) 当事者
      •  ア 原告らは、いずれも沖縄県の住民である。

      •  イ 被告は、法242条の2第1項4号所定の沖縄県の執行機関である。

    • (2) 別件訴訟の経緯
      •  ア 警視庁所属の警察官は、沖縄県警の指揮管理の下、平成28年11月3日、ヘリコプター着陸帯建設関連工事が行われていた米軍北部訓練場(沖縄県国頭郡東村等に所在)付近の県道において、検問を行っていた際、同県道を走行中の車両を運転していた弁護士を、同工事に対する抗議参加者として扱い、2時間以上同所に留め置いた上、同車両の外側から同車両に向けてビデオ撮影をするなどした(以下「本件各行為」という。)(甲2)。

      •  イ 上記弁護士は、沖縄県を被告として、国家賠償法に基づく損害賠償請求訴訟を提起し(那覇地方裁判所平成28年(ワ)第893号)、同裁判所は、平成30年1月16日、本件各行為は国家賠償法上違法であるとして、沖縄県に対し、損害賠償金30万円及びこれに対する平成28年11月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じる一部認容判決を言い渡した(甲2.以下「本件判決」という。)。

      •  ウ 沖縄県警は、平成30年1月22日、本件判決を不服として控訴するため、沖縄県平成30年第2回臨時会に提案するための議案を作成し、沖縄県警本部長、沖縄県公安委員長らの決裁を得て、沖縄県議会の議決を得るための準備を整えた(甲4、5)。

      •  エ 翁長前知事は、本件判決に対しては控訴しないとすること(以下「本件不作為」という。)とし、同月29日、本件判決について、沖縄県警からは控訴したいとの考えが示されていたが、諸事情を総合的に勘案した結果、控訴しないことが適当であると判断したとする旨の知事コメント(乙1。以下「本件コメント」という。)を発表した。

      •  オ 本件判決は、当事者双方から控訴提起がなく、控訴期間の経過により確定した。

    • (3) 本件判決による損害賠償金の支払

       沖縄県は、同年2月14日の支出負担行為、同月19日の支出命令を経て、同月28日、沖縄県警会計課長の専決により、本件判決に基づく損害賠償金として、遅延損害金を含めて31万9849円を支出し(以下「本件支出」という。)、上記弁護士に対し支払った(甲6ないし8)。

    • (4) 原告らによる監査請求及び提訴
      •  ア 原告らは、同年3月22日付けで、沖縄県監査委員に対し、本件不作為は知事の裁量の範囲を逸脱した違法なものであるとして、本件支出に係る31万9849円について翁長前知事に賠償を求めるべきとする沖縄県職員措置請求(甲9.以下「本件監査請求」という。)をした。

      •  イ 沖縄県監査委員は、同年4月17日付けで、本件監査請求は法242条1項の受理要件を欠くとして、これを却下する決定をし(甲1)、その頃、これが原告らに通知された。

      •  ウ 原告らは、同年5月15日、本件訴訟を提起した。

  2. 争点及び争点に関する当事者の主張
     本件において、原告らは、住民訴訟の対象とすべき違法な財務会計上の行為について、①本件不作為自体が違法な財務会計行為に当たるとの構成(以下「請求原因①」という。)及び②財務会計行為とは本件支出を指すところ、本件支出は、その原因行為である本件不作為の違法を承継しているとの構成(以下「請求原因②」という。)を選択的に主張しているものと解される。
    • (1) 本件不作為自体が財務会計行為に該当するか(請求原因①関係・本案前の主張・争点(1))
      【原告らの主張】
      •  ア 翁長前知事による本件不作為は、控訴を断念することにより、必然的に、沖縄県が敗訴した本件判決が確定することとなり、沖縄県は本件支出を強いられるとの結果をもたらすものであって、本件支出と一体の行為として観念することができるものであるから、本件不作為自体が財務会計行為に該当するというべきであって、請求原因①による請求は適法である。

      •  イ 裁判例においても、民事調停法17条による調停に代わる決定に対し、市長が異議を述べずにこれを確定させたことを、違法な財務会計上の行為に該当するとして、市長に対する請求を一部認容したものがある(京都地裁平成13年1月31日判決・判例自治226号91頁。以下「京都地裁判決」という。)。
         本件不作為が本件判決の確定をもたらして直ちに沖縄県に損害賠償債務を発生させる点は、調停に代わる決定に対し異議を述べない行為と同様であるから、本件不作為は、財務会計行為に該当するというべきである。

      【被告の主張】
      •  争う。本件不作為は財務会計行為には該当しない。
         したがって、本件不作為を対象とする原告らの訴えは、非財務会計行為を対象とするものであって、不適法である。

    • (2) 本件不作為の違法性(請求原因①及び②共通・争点(2))
      【原告らの主張】
      •  ア 法は、自治体を被告とする訴訟の控訴の提起を議決事件と定めるが(法96条1項12号)、その議案の提出は長の担任事務と定めている(法149条1号)。
         法は、基本的組織原理として執行機関の多元主義を採用している。これは、長から独立した権限を有する執行機関である委員会を複数配置し、これら複数の執行機関を長の下に系統的に構成して一体的に行政機能を発揮すると共に、政治的中立ないし専門性の要請から、いわゆる行政委員会に独立した権限を委託することにより、一つの執行機関への権限集中を避けて権限を分掌させ、各々が独立して事務処理を行うことで、民主的かつ中立公平な行政が行われることを期待するものである。
         法は、予算の調製・執行、議案の提出、地方税の賦課徴収、決算を議会の認定に付することといった権限について、委員会等の所管事項であっても、委員会等ではなく所轄権限を有する長の権限としているが(法180条の6)、これは、議決権限あるいは広く住民一般との関係における管理・執行権限を統一的に行使させ、財政運営を一元的に処理することにより、地方公共団体の一体性を確保しようとするものであり、こうした多元的な執行機関による行政機能を一体的に発揮するためには、執行機関相互の連絡を図って権限が行使されなければならないことは必然であるから、長は、所轄権限の行使に当たり、各執行機関が長から独立して所管する行政部門の意思決定を尊重し、特段の事情がない限り、これに従うべきである。

      •  イ 公安委員会は、都道府県警察を所管する行政委員会であり、独立して管理執行する権限を有しており、その行使に対して知事の指揮命令権は及ばないが、知事の所轄の下に置かれ、知事が委員の任免や議案の提出、予算の調製・執行等の権限を行使することを通じて、行政の一体性を図ることが期待されている。

      •  ウ 本件においては、独立した職務権限を有する沖縄県警が、控訴をすべきであるとの判断を強く示していたのであるから、特段の事情のない限り、沖縄県警の意思決定を尊重しなければならなかったにもかかわらず、翁長前知事は、沖縄県警の上記判断と意思を踏みにじり、本来であれば行政の統一的行使を図るためだけのものであるはずの所轄権限を濫用して、自己の政治的判断に基づいてこれを行使し、本件不作為に及んだものである。
         このような本件不作為は、法の採用する執行機関の多元主義という基本原理に正面から違背し、その趣旨を潜脱するものであって、違法性は明らかであるし、これにより本件支出に直結するものである点において、著しく合理性を欠いているから、予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵があるというべきである。

      【被告の主張】
      •  争う。原告らの主張は、法における地方公共団体の執行機関の多元主義及び長の権限の一体的行使の趣旨についての理解を誤るものである。
         知事には控訴提起をすべきか否かについての意思決定権限があるところ、翁長前知事の本件不作為における判断に、裁量権の逸脱・濫用はない。

    • (3) 本件支出は本件不作為の違法を承継するか(請求原因②関係・争点(3))
      【原告らの主張】
      •  ア 判例上、財務会計行為が違法となるのは、「単にそれ自体が直接法令に違反する場合だけではなく、その原因となる行為が法令に違反し許されない場合の財務会計上の行為もまた、違法となる」とされている(川崎市職員分限免職事件判決・最高裁昭和60年9月12日第一小法廷判決・集民145号357頁)。
         また、津地鎮祭事件判決(最高裁昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号678頁)は、原因行為が無効であれば、これに基づく財務会計行為も違法となるとしているほか、一日校長事件判決(最高裁平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁)は、原因行為が違法ではあるが無効ではなく、財務会計行為を行う長又は職員が原因行為の是正権限を有しないときは、原因行為が著しく合理性を欠き、そのためにこれに予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵の存する場合には、財務会計行為も違法になるとしている。

      •  イ 本件において、財務会計行為である本件支出は、本件不作為を原因行為とするものであるところ、前記(2)で原告らが主張するとおり、本件不作為の違法性は法の基本秩序を害する重大なものであるから、本件不作為は無効というべきであるし、又は、本件不作為は、著しく合理性を欠き、予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵があるというべきであるから、本件不作為の違法性は、本件支出に承継されると解すべきである。

      •  ウ なお、本件訴訟における財務会計行為を、沖縄県警会計課長による本件支出であると捉える場合であっても、地方公共団体の長には予算の執行権や支出命令権があり(法149条2号、232条の4第1項)、本来的に公金の支出権限を有するから、翁長前知事は、法242条の2第1項4号の「当該職員」に該当する。

      【被告の主張】
      •  争う。本件支出の原因となる行為は、確定した本件判決により支払が命じられたことであり、県は負担した債務を履行したものであって、適法な支出である。本件不作為は賠償金負担の原因行為には当たらず、その適法・違法が本件支出に承継されることはない。

    • (4) 損害の発生及び額(請求原因①及び②共通・争点(4))
      【原告らの主張】
      •  本件判決に対し控訴をしていれば、沖縄県は本件支出をせずに済んだから、本件不作為により、沖縄県は31万9849円の損害を被った。
         仮に、控訴していた場合の沖縄県の逆転勝訴の高度の蓋然性までは認められないとしても、勝訴機会の喪失そのものを損害として捉えるべきである。

      【被告の主張】
      •  損害の発生は否認する。本件判決に対して控訴した場合の控訴審の結果を見通すことはできない。

第3 当裁判所の判断

  1. 争点(1)(本件不作為自体が財務会計行為に該当するか)について(請求原因①関係)
    • (1) 原告らは、翁長前知事による本件不作為は、控訴を断念することにより、必然的に、沖縄県は本件支出を強いられるとの結果をもたらすものであって、本件支出と一体の行為として観念することができるものであるから、本件不作為自体が財務会計行為に該当するというべきである旨主張する。
       しかし、本件判決に関し、仮に翁長前知事が控訴に係る議案を提出したとしても、控訴を行うためにはさらに沖縄県議会の議決が必要となるところ(法96条1項12号)、賛成の議決が得られたか否かは定かではない。
       また、仮に沖縄県議会の議決が得られたとしても、これにより直ちに本件判決の効力が失われるものではなく、本件判決が変更されるか否かは上訴審の判断にかかるものであり、その判断の結果もおよそ定かではない。
       そうすると、本件不作為がなければ必ず本件支出を避けることができたという関係は存在しないのであって、本件不作為が直ちに本件支出に結び付いたといえないことは明らかである。
       よって、本件不作為については、法242条1項にいう「債務その他の義務の負担」をしたものとはいえないことが明らかである。

    • (2) 原告らが引用する京都地裁判決は、裁判所がした調停に代わる決定について、市長が異議を申し立てなかった不作為について、この不作為により、市が代金の支払義務を負担して土地を取得する旨の裁判上の和解をしたことと同一の効力が発生することとなったという事案において、上記市長の不作為は、直ちに上記土地取得の効力及び代金支払義務の発生をもたらすものであるから、それ自体が「財産の取得」又は「債務その他の義務の負担」に当たり、財務会計行為に当たるとしたものであって、本件とは事案を異にすることが明らかである。

    • (3) 以上のとおり、本件不作為が本件支出と一体のものであるということはできず、本件不作為そのものを財務会計行為に当たると認めることはできないから、請求原因①にかかる原告らの訴えは、非財務会計行為を対象とするものとして、不適法である。
       そこで、続いて請求原因②について検討する。

  2. 争点(2)(本件不作為の違法性)について(請求原因②関係)
    • (1) 原告らは、翁長県知事による本件不作為について、独立した職務権限を有する沖縄県警が、控訴をすべきであるとの判断を強く示していたのであるから、特段の事情のない限り、沖縄県警の意思決定を尊重しなければならなかったにもかかわらず、翁長前知事は、所轄権限を濫用して、自己の政治的判断に基づいてこれを行使し、本件不作為に及んだもので、法の採用する執行機関の多元主義という基本原理に正面から違背し、その趣旨を潜脱するものであって、違法性は明らかである旨主張する。

    • (2) 確かに、法138条の3第1項は、「普通地方公共団体の執行機関の組織は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、それぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関によって、系統的にこれを構成しなければならない。」と定めており、執行機関の多元主義を採用していると解される。
       しかし、同条第2項は、「普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。」と定めていることからすると、執行機関の分立は、行政の民主化の要請や、行政執行上の公正妥当を期するためのものであって、最終的には、同一の地方公共団体の作用として矛盾等が生じないよう、相互に連絡を取りながら執行すべきことが求められているといえるし、法が、長に所轄権限(法138条の3第1項、2項)と共に委員会及び委員に対する総合的調整権(法138条の3、180条の4、221条1項、238条の2)を与えていることからすると、法は、長が間接的に委員会等を統括できるようにすることで、行政運営の一元的な処理を図ることにより、地方公共団体の一体性を確保しようとしていると解される。

    • (3) これを前提に検討すると、法において、公安委員会は都道府県警察の管理権限を有するが(法180条の9第1項)、議会との関係における事務については権限を有さず(法180条の6第2号)、議案を作成し提案する最終権限は知事にあること(法149条1号)が明確に規定されており、また、上記のとおり、法は、長に所轄権限及び総合的調整権を与えることで、行政機能の一体性を確保しようとしているから、知事は、他の執行機関の所管事項に関する議案についても、県の長としての観点から、これを判断し決定する権限を有しているということができる。

    • (4) 原告らが指摘するとおり、本件において、公安委員会が控訴すべきと考えていたことは、前記前提事実(2)ウ及びエのほか、沖縄県議会における沖縄県警本部長の答弁(甲10)からも明らかである。
       しかし、法が控訴には議会の議決を要求していることや、長に議案の提出権限が与えられていることからすると、知事がこの権限に基づき行った議案提出の当否の判断が、執行機関である公安委員会の考えに沿わないこと自体をもって、知事の上記判断に裁量権の濫用又は逸脱があることにはならないことは明らかである。

    • (5) 原告らは、本件不作為は、翁長前知事が、選挙対策等の政治的な判断により行った恣意的なものである旨綾々主張するが、本件全証拠によっても直ちにそのような事実は認められない上、翁長前知事が本件コメントに示された考えに基づき本件不作為に及んだとしても、これにより本件不作為が違法性を帯びるとも認められないし、ほかに、本件不作為が違法であることを認めるに足りる証拠はない。
       よって、原告らの主張は採用できない。

  3. 争点(3)(本件支出は本件不作為の違法を承継するか)について(請求原因②関係)
    • (1) 原告らは、①財務会計行為である本件支出は、本件不作為を原因行為とするものであるとした上で、本件不作為は、法の基本秩序を害する重大なものであって無効であるか、又は、本件不作為は、著しく合理性を欠き、予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵があるから、本件不作為の違法性は、本件支出に承継されると主張する。

    • (2) しかし、本件不作為に違法性が認められないことを措いたとしても、そもそも、本件支出は、確定した本件判決により命じられたものであるから、沖縄県の賠償金支払義務の発生原因は、本件判決自体であり、さらにいえば、本件判決により認定された違法行為である本件各行為であると解するのが相当である。
       また、上記1(1)のとおり、本件不作為がなければ必ず本件支出を避けることができたという関係は存在せず、本件不作為が直ちに本件支出に結び付いたともいうことができない。
       そうすると、本件不作為は、本件判決の確定及び本件支出に至るまでの一過程にすぎないものであって、本件不作為により、沖縄県に本件支出が発生したとは認められず、翁長前知事が本件不作為により控訴をしなかったことは、本件支出の原因行為に当たらないことが明らかである。したがって、本件不作為の適法・違法が本件支出に承継されることはないと解するほかない。
       本件支出は、確定した本件判決により県が負担した債務の履行として適切に支出されたものであって、違法な支出に当たらないこ。とも明らかである。

    • (3) なお、本件不作為について、法の基本秩序を害する重大な違法があり無効であるとはいえないことや、著しく合理性を欠き予算執行の適正確保の見地から看過できない瑕疵があるとはいえないことは、上記2で判示したとおりであるから、この点においても、本件不作為の違法性が本件支出に承継されることはない。

    • (4) そうすると、そもそも本件不作為が違法であるとは認められない上、本件支出が本件不作為の適法・違法を承継するという関係も認められないから、請求原因②にかかる原告らの請求に理由がないことは明らかである。

  4. 結論
    • 以上のとおりであるから、争点(4)について判断するまでもなく、原告らの本件請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

那覇地方裁判所民事第1部

裁判長裁判官 剱持淳子

裁判官 児島 章朋

裁判官 小島 武士


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