沖縄県政の刷新を求める会

万国津梁会議設置支援業務委託料返還訴訟

訴状訴状

訴状

請求の趣旨

  1. 被告が別紙契約目録記載の契約(以下「本件契約」という。)を解除しないことは違法であることを確認する。
  2. 被告は、玉城康裕に対し、2166万円及び内金722万円については令和元年6月10日から、内金722万円については同年8月6日から、内金722万円については同年9月4日から、それぞれ支払い済みまで年5分の割合による金員を沖縄県に支払うよう請求せよ。
  3. 被告は、万国津梁会議設置等支援業務スタートチームに対し、2166万円及び内金722万円については令和元年6月10日から、内金722万円については同年8月6日から、内金722万円については同年9月4日から、それぞれ支払い済みまで年5分の割合による金員を沖縄県に支払うよう請求せよ。
  4. 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

請求の原因

第1 当事者
  1. 原告らは、いずれも後述する沖縄県職員措置請求を提起した沖縄県民である。
  2. 被告は、地方自治法1条の3第2項所定の普通地方公共団体である沖縄県の首長である。
  3. 玉城康裕(以下「玉城知事」という。)は、平成30年9月30目開票の沖縄県知事選で当選し、同年10月4日、沖縄県知事に就任し、今もその地位にある。
  4. 万国津梁会議設置等支援業務スタートチーム(以下「本件スタートチーム」という。)は、一般社団法人子ども被災者支援基金を代表者とする4社の共同事業体であり、本件契約に基づき後述する委託業務を受託したものである。

第2 事実の経過
  1. 万国津梁会議
     沖縄県は、目指すべき沖縄の将来像を実現し、新時代の沖縄を構築すること等を目的として、①「人権・平和」、②「情報・ネットワーク・行政」、③「人材育成・教育・福祉・女性」、④「経済・財政」、⑤「自然・文化・スポート」の5つの分野について有識者等から意見を聴取するものとして万国津梁(ばんこくしんりょう)会議を設置した。その設置等支援に係る業務は、県交流推進課が行なってきた。【甲3】
  2. 本件契約
     沖縄県は、県交流推進課が行なってきた設置等支援に係る業務のうち、会議等の運営支援、担当者の配置1、資料収集、資料作成、会議の報告等の取りまとめ、会議のあり方等、成果物の作成、その他県が指示する事項について第三者に業務委託することを決め、令和元年5月24日、本件スタートチームとの間で、万国津梁会議設置等支援業務を委託することを内容とする別紙契約目録記載の「令和元年度万国津梁会議設置等支援業務委託契約」(「本件契約」)を締結した【甲4】。
     本件契約は、一般募集後、令和元年4月17日に行なわれた募集説明会には6社が参加したが、その後唯一応募した本件スタートチームとの間で、随意契約の方法により令和元年5月24日に締結された。
    1 テーマごとに複数の会議が行なわれることが予定されているため複数の担当者の配置が要請されている。配置担当者の主な役割は、会議等の運営支援、資料収集、資料作成、会議の報告等の取りまとめである(契約書第1条1項別添1「仕様書」4(2))【甲4】

  3. 本件スタートチーム
     本件スタートチームは、一般社団法人子ども被災者支援基金(以下「本件子ども基金」という。)【甲5】を代表者とする4社からなる共同事業体であり、本件契約に基づき配置すべき担当者(以下「配置担当者」という。)として本件子ども基金の沖縄事務所長徳森りま(以下「徳森所長」という。)を派遣していた。
  4. 沖縄県による支払状況
    • (1) 本件契約の定め
       本件契約16条1項は、委託業務にかかる沖縄県の支払いについて規定しており、着手時に業務委託料の10分の3に相当する額を支払い(同項1号)、以後は事業の進捗度合いに応じて業務委託料の10分の9に相当する額を請求できる旨定められていた(同項2号)【甲4】。
    • (2) 支払い状況
       沖縄県は本件契約の締結後、本件スタートチームに対し、令和元年6月10日に722万円(第1回支払)、同年8月6日に722万円(第2回支払)、同年9月4日に722万円(第3回支払)をそれぞれ支払い、もって本件契約の業務委託料全額2407万7000円の約9割に相当する2166万円を支払った。
  5. 事業の進捗状況
     ところが、業務委託料全額の約9割である2166万円が支払われた令和元年9月4日の時点で、本件契約の履行対象となる前記5分野のうち、3分野(①「人権・平和」、②「情報・ネットワーク・行政」、③「人材育成・教育・福祉・女性」)については「SDGs普及推進のための県民円卓会議」(2019年9月28日13時~15時40分、沖縄県立図書館)の主催など一部しか実施されておらず、残りの2分野(④「経済・財政」、⑤「自然・文化・スポーツ」)については全く手つかずの状態であった。
  6. 事業の放棄
     本件契約に基づき配置担当者の役割を担っていた徳森所長は、令和元年9月30日をもって本件子ども基金を退職し、それ以降行方をくらましている2。以後、今日に至るまで本件スタートチームは、本件契約所定の配置担当者を置くこともなく空席にし、本件契約に基づく委託業務を放棄している。
    2 本件契約締結の前日の令和元年5月23日の深夜、玉城知事、徳森所長、受託業者ら、県職員らが集い宴会をしていたことが発覚し、議会で問題とされたのが令和元年9月30日であり、同日に徳森所長は本件子ども基金を退職していた【甲6】。その後、本件子ども基金代表理事鈴木理恵と徳森所長の県議会での参考人招致が決定されたが、同年12月5日両者とも書面で出席を拒否してきたため、議会は、引き続き出席の要請を続けているというのが現状である。

第3 住民監査請求
  1. 原告らの住民監査請求
     原告らは、令和元年12月23日、本件契約を解除すること、本件契約が違法・不当であることを理由に本件スタートチームに対して支払われた全額2166万円を返還すること、「委託事業の進捗度合いに応じて」なすべき支払いがなされなかったことを理由に2回目3回目に支払われた合計1444万円を返還することを求めて、沖縄県監査委員に対して沖縄県職員措置請求(以下「本件住民監査請求」という。)を行い、令和2年1月10日、受理された。【甲2】
  2. 合議の不調
     3名の監査委員のうち2名は、上記1444万円の請求について理由があるとし、その支出を不当と認め、更にうち1名は同金員を返還するべきとしたが、3名の委員の意見の一致が得られなかったため、合議不調となった。【甲2】
  3. 監査の決定における合議不調について
     監査及び勧告についての決定は、監査委員の多数決ではなく監査委員の合議による(地方自治法242条8項)。合議は監査に加わったすべての監査委員の意見が一致することが必要となるが、本件では、意見が一致しなかったため合議不調となったのである。

第4 請求の趣旨第1項(3号請求)にかかる請求
  1. 解除事由と解除の必要性
     上記のとおり、本件契約において、本件スタートチームは、業務委託の対象となった5分野のうち、3分野については一部しか実施せず、2分野については完全に放置しており、委託業務の達成の見込みはない。
     また、本件契約に基づき派遣された配置担当者徳森所長は、令和元年9月30日付で同基金を退職し【甲6】、行方をくらましており、その後本件スタートチームは、配置担当者を新たに派遣することなく空席のまま放置している。
     さらに、本件スタートチームは、本件契約において委託業務の進捗度合いによる請求しかできないことが明記されているにもかかわらず、進捗度合いをはるかに超える委託料全額の約9割の金額を沖縄県に請求し、沖縄県からの支払いを受けている。
     以上から、本件契約所定の解除事由(本件契約第20条1項)【甲4】が生じており、被告はそれを認識しているにもかかわらず解除権を行使しない。
     そして、本件スタートチームは、前記のとおり新たな配置担当者を派遣しておらず空席になっており、委託業務の遂行に著しい困難が生じている。本件契約を解除する必要性は高い。
  2. 小括
     以上から、被告が、本件契約を解除しないことが違法であることの確認をするべきである。

第5 請求の趣旨第2項(4号請求)にかかる請求
  1. 本件契約の重大な違法と無効
    • (1) 本件契約の締結における違法
       本件契約は、そもそも担当する交流推進課において行う業務そのものであって業務委託の必要性はなかったといえるものである。
       また、契約内容においても、本件スタートチームが提案した見積書について沖縄県は何ら精査していなかった。たとえば、委員の報酬額設定の単価(日額2万7000円)は、沖縄県特別職に属する非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する規則(昭和47年沖縄県規則第111号)で定めた日額単価9300円よりも2倍程度の高額で見積もりされているのである。
       受託者の選考過程において、沖縄県において何ら実績がない山形県の本件子ども基金を代表者とする本件スタートチームを受託者としているが、そもそも本件子ども基金は参加資格要件を満たしていなかった。また、複数の業者による企画提案の比較検討もしていなかった。
       以上のとおり、本件契約は、違法に締結されたものである。
    • (2) 随意契約の方法によることに関する違法性
       さらに、本件契約は随意契約の方法によっているところ、地方自治法施行令第167条の2第1項は、随意契約の方法によることが許される場合を列挙しているが、本件契約は、列挙事由のいずれにも該当せず、随意契約の方法によることは違法というべきである(最三小判昭和62年5月19日民集41巻4号687頁)。
       本件契約は、同施行令第1項第2号3の規定に基づく随意契約としてプロポーザル方式により公募されたが、複数の業者による企画提案の比較検討はされなかった。原告らは、審査請求においてこの点を問題視しているが、それは、本件スタートチームと随意契約をしたことの合理性に疑問を呈するもので、ひいては同施行令同2号に該当する許された随意契約とされたことにっいて疑問を呈するものである。しかし、監査委員は「沖縄県随意契約ガイドラインに沿って随意契約がなされている」とガイドラインも示さずいうだけで、原告らの疑問への回答となっていない。
      3 第2号 不動産の買入れ又は借入れ、市が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき

    • (3) まとめ
       以上から、本件契約は、重大な違法があり無効というべきである。

  2. 違法な支出行為
     本件において上記支出行為をした沖縄県職員は、本件契約に基づき委託業務の進捗度合いについて適切な調査等をした上で上記1444万円の支出をすべき義務を負っている。
     しかしながら、当該職員は、委託業務の進捗度合いを何ら確認することなく、また進捗度合いに関する報告書等を本件スタートチームに対して提出させてもいない。当該職員の義務違反は明白である。
     そして、玉城知事は、当該職員への指揮監督義務を怠っており、職務上の義務に反していることは明らかである。
  3. 損害
     玉城知事は、職務上の義務に反し重大な違法があり無効な本件契約の締結をし、当該職員に違法な支出をさせている。これにより、沖縄県は、着手金(第1回目の722万円)も含めた業務委託料相当額の合計金2166万円の損害を被った。
     仮に本件契約が無効とされないとしても、玉城知事は、上記職務上の義務に反し、当該職員に違法な支出をさせている。これにより、沖縄県は、第2回目と第3回目の業務委託料相当額の合計1444万円の損害を被った。
  4. 小括
     以上から、玉城知事は、沖縄県に対して上記損害を賠償する責任を負う。

第6 請求の趣旨第3項(4号請求)にかかる請求
  1. 不当利得返還ないし不法行為に基づく損害賠償請求
     上記のとおり、本件契約は、重大な違法があり無効である。法律上の原因なく、沖縄県が支出した業務委託料相当額の合計2166万円の損失を沖縄県が被り、本件スタートチームは、同額の利得を得ている。また、本件スタートチームは、本件契約は重大な違法があり無効であると認識しており不法行為責任も認められ、沖縄県は上記同額の損害を被っている。
     したがって、本件スタートチームは、沖縄県に対して上記金員2166万円の不当利得返還ないし不法行為に基づく損害を賠償する責任を負う。
  2. 債務不履行に基づく損害賠償請求
     また、本件スタートチームは、前記のとおり、委託された5分野のうち3分野については一部しか実施せず2分野については全く手をつけず放置したまま、業務委託料全額の約9割の金額を沖縄県に請求し、沖縄県は支出をしている。これにより、沖縄県は、上記合計1444万円の損害を被っている。
     したがって、本件スタートチームは、沖縄県に対して上記1444万円の債務不履行に基づく損害を賠償する責任を負う。

第7 まとめ
 よって、原告らは、
 地方自治法242条の2第1項3号に基づき被告が本件契約の解除をしないことが違法であることを確認する(請求の趣旨第1項)、
 地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被告に対し、相手方玉城康裕に対する債務不履行(委任契約に基づく善管注意義務違反〉による損害賠償金2166万円及び沖縄県が各支出した金額(各内金770万円)に対する債務不履行の後である各支出日(令和元年6月10日、同年8月6日、同年9月4日)から、または同相手方に対する債務不履行による損害賠償金1444万円及び沖縄県が各支出した金額(各内金770万円)に対する債務不履行の後である各支出日(令和元年8月6日、同年9月4日〉から、それぞれ支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を沖縄県にするよう請求する(請求の趣旨第2項〉、
 及び地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被告に対し、相手方本件スタートチームに対する不当利得金ないし不法行為による損害賠償金2166万円及び沖縄県が各支出した金額(各内金770万円)に対する悪意(民法704条)となった後であり不法行為の後である各支出日(令和元年6月10日、同年8月6日、同年9月4日)から、または同相手方に対する債務不履行による損害賠償金1444万円及び沖縄県が各支出した金額(各内金770万円)に対する債務不履行の後である各支出日(令和元年8月6日、同年9月4日)から、それぞれ支払い済みまで民法所定の年5分の割合による上記不当利得返還請求においては利息、上記損害賠償金においては遅延損害金の各支払を沖縄県にするよう請求する(請求の趣旨第3項〉
ことを求めて、本提訴に及んだ次第である。

証拠方法
  1. 甲第1号証 沖縄県職員措置請求書
  2. 甲第2号証 沖縄県職員措置請求について(通知)
  3. 甲第3号証 万国津梁会議設置要綱
  4. 甲第4号証 契約書
  5. 甲第5号証 全部事項証明書
  6. 甲第6号証 新聞記事

付属書類
  1. 甲号証写し 各1通
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