沖縄県政の刷新を求める会

万国津梁会議設置支援業務委託料返還訴訟

監査請求監査請求

監査請求

沖縄県監査委員殿

 

令和元年12月23日

沖縄県職員措置請求書

第1 請求の要旨
 沖縄県(以下「県」という。)は、令和元年5月24日、一般社団法人子ども被災者支援基金(以下「子ども被災者支援基金」という。)を代表者とする万国津梁会議設置等支援業務スタートチーム(以下「本コンソーシアム」という。)との間で、県を発注者、本コンソーシアムを受注者とする令和元年度万国津梁会議設置等支援業務委託契約(以下「本業務委託契約」という。)を締結した(資料1)。
 しかし、本業務委託契約は、契約内容及び契約の相手方である受注者の選定過程において、正当性・妥当性を欠くものであり、同契約締結は違法・不当な契約締結に当たる。
 また、本業務委託契約第16条第1項・第2項に基づき、令和元年6月10日に金722万円、同年8月6日に金722万円、同年9月4日に金722万円(合計金2166万円)が県から本コンソーシアムに対し支払われている(資料2の1~3)。
 上記の通り、本業務委託契約締結は違法・不当な契約締結であるから、上記2166万円の支払は、違法・不当な公金の支出に当たる。
 仮に、本業務委託契約締結が違法・不当な契約締結に当たらないとしても、着手時を除いた業務委託料の概算払いについては「委託事業の進捗度合いに応じて」支払わなければならないところ(資料1・本業務委託契約第16条第1項(2)・第2項)、上記支払の内、1444万円については進捗度合いに応じた支払がなされていないことから、違法・不当な公金の支出に当たる。
 よって、請求者らは、沖縄県監査委員に対し、監査を求め、県知事玉城康裕が本業務委託契約を解除した上で本コンソーシアムに対し金2166万円の返還を求めること、予備的に、県知事玉城康裕が本コンソーシアムに対し金1444万円の返還を求めることを勧告することを求める。

第2 請求の理由
  1. 違法・不当な契約締結について
    • (1) 契約締結自体に正当性・妥当性がないこと
       本業務委託契約の具体的内容については、契約書添付の令和元年度万国津梁会議設置等支援業務委託仕様書(以下「本業務委託仕様書」という。)の「4委託業務内容」に定められており(資料1)、「(1)会議等の運営支援」及び「(3)資料収集・資料作成、会議の報告等取りまとめ」が主要な業務であるとされている。
       しかし、以下に述べる通り、本業務委託仕様書に指定されている「(1)会議等の運営支援」及び「(3)資料収集・資料作成、会議の報告等取りまとめ」については、主として県職員が現に対応した業務ないしは対応可能な業務であり、業務委託を行う必要性は全くない。

      • ア 「(1)会議等の運営支援」について
         「(1)会議等の運営支援」としては、「①会議の運営業務」として「会場確保及び設営※会議会場は基本的に県庁周辺で開催」「資料整理」「各委員の日程等連絡調整」「会議進行(委員長が進行する部分を除く)及び補助※必要な場合」「通訳手配等※必要な場合」が挙げられ、その他に「②会議の内容に関する情報収集及び資料作成(外国語対応を含む)」「③議事録作成(概要版、詳細版)」「④委員への報酬費(日額27,000円)及び旅費の支払い」「⑤委員の旅行手配※必要な場合」「⑥会議に係るお茶等準備、運営資料作成・準備等」「⑦会議運営等に係る経費の支払い」「⑧その他会議の運営等に必要なこと」が挙げられている。
         上記各業務のうち、まず「①会議の運営業務」「会場確保及び設営」については、「会議会場は基本的に県庁周辺で開催」と指示されていることからして、県庁や公共施設で会議を開催すれば事足りるのである から、あえて会場確保・設営のために業務委託をする必要はない。実際、実施された万国津梁会議5回の内訳は、県庁で実施されたのが2回、公共施設が1回、ホテルが2回あることからしても(資料16・6~7頁)、業務委託が不要であることは明らかである。また、「資料整理」については、県庁職員や各委員が作成した資料を整理する業務となるので、今まで担当していた県庁職員が行った方が効率的・効果的であり、業務委託の必要はない。「各委員の日程等連絡調整」についても、各委員を選定した県庁の各部局の職員が連絡調整すれば済む話であり、委託の必要はない。実際に、県文化観光スポーツ部長は、議会答弁において「当然担当課も交えまして、委員の皆様とその会議受託者の中で調整が行われている」と述べている(資料18・5頁)。「会議進行(委員長が進行する部分を除く)及び補助※必要な場合」についても、会議には県庁職員が必ず随行しているのであるから、必要な場合の進行・補助は、県庁職員が対応すれば何ら問題はなく、委託の必要はない。さらに「通訳手配等※必要な場合」については、県庁職員が手配すれば済むのであるから、あえて中間に業者を入れて、二度手間になるような業務委託をする必要はない。
         次に、「②会議の内容に関する情報収集及び資料作成(外国語対応を含む)」については、今まで行政側で作成した資料及び各委員が作成した資料以外に、委託された業者が独自に作成すべき資料の必要性がなければ、業務委託する必要はない。ところが、実際に本コンソーシアムが作成した資料は一切ないのであるから(資料18・6~7頁)、業務委託の必要性がなかったことは明らかである。
         次に「③議事録作成(概要版、詳細版)」及び「⑥会議に係るお茶等準備、運営資料作成・準備等」については、県で実施されている様々な会議と同様、担当部局の職員にて十分に対応可能であり、また、会議内容を所管する部局の職員の方が、中身を把握しており、柔軟性をもって、効率的・効果的な対応が期待できることから、委託の必要性は皆無である。
         次に「④委員への報酬費(日額27,000円)及び旅費の支払い」及び「⑦会議運営等に係る経費の支払い」については、万国津梁会議以外の審議会の委員報酬等と同じく、会計課等がその都度処理すれば何ら問題はないのであるから、わざわざ二度手間となる業務委託をする必要はない。
         最後に「⑤委員の旅行手配※必要な場合」については、旅行の手配が必要な場合だけ、旅行会社等に依頼すれば済むのであるから、業務委託の必要はない。
         以上の通り、「(1)会議等の運営支援」については、委託の必要性は全くない。

      • イ 「(3)資料収集・資料作成、会議の報告等取りまとめ」について
         上記(1)②において述べた通り、行政側及び各委員が作成した資料以外に、受託業者が独自に作成すべき資料はなく、実際に本コンソーシアムが作成した資料は一切ないことから、業務委託の必要性はない。

      • ウ 小括
         以上の通り、本業務委託仕様書に指定されている「(1)会議等の運営支援」及び「(3)資料収集・資料作成、会議の報告等取りまとめ」については、主として県職員が現に対応した業務ないしは対応可能な業務であり、業務委託を行う必要性は全くないから、本業務委託契約を締結すること自体に正当性・妥当性はなく、本業務委託契約締結は不当な契約締結に当たる。

    • (2) 契約内容が正当性・妥当性を欠いていること
      • ア 本業務委託契約は、令和元年5月24日に業務委託料24,077,000円にて締結されているが(資料1)、その金額の設定根拠は、本コンソーシアムが提出した同日付の見積書(以下「本見積書」という。)である(資料3)。
         本見積書の内訳を見ると、県の提示した平成31年度万国津梁会議 設置等支援業務委託企画提案仕様書(以下「本企画提案仕様書」という。)(資料4)の通り、会議構成について、「会議:5名(県内2名、県外2名、海外1名)×5会議=25名」「会議の開催頻度:年2回×5会議=10回」として費用を算出されており、委員報酬費は「27,000円/回」「50回」合計1,350,000円が計上されている。ところが、本企画提案仕様書に指定がないにもかかわらず、「委員日当」として合計310,000円が別途計上されており、本見積書が不必要な費用を計上していることが分かる。
         また、本企画提案仕様書には「会議毎に担当者を設置すること(企画提案では5つの会議を想定)」とされているにもかかわらず、本見積書では「会議運営担当者(責任者)」「会議運営担当者(スタッフ)「会議運営担当者(スタッフ)」となっており、会議運営担当者の人件費は3名分しか計上されていない。すなわち、本見積書は、万国津梁会議が実際には3つの会議しか設置されないことを前提に作成されたものであり、本企画提案書にそぐわない内容となっている。なお、本見積書の内容に呼応するかの如く、本業務委託契約書に添付されている本業務委託仕様書(資料1)には、本企画提案書の内容と異なり、「5つの分野全ての会議が立ち上がるとは限らないことに留意」と注意書きがなされている。
         さらに、本見積書には、「会議室賃料」「100,000円/回」「10回」として合計100万円が計上されている。前述した通り、会議室については県庁周辺を確保する旨の指定があり、県庁や公共施設での開催が十分可能であるから、全ての会議について1回10万円もの経費を計上するのはあまりに杜撰であり、いたずらに業務委託費を吊り上げようとして算定したものと言わざるを得ない。また、本見積書は、人件費の単価を「3,800円/時間」、お茶代に「10,000円/回」と高額に設定しており、明らかに精査されていない内容となっている点についても付言する。
         以上の通り、本見積書は全く精査されていない内容であるにもかかわらず、本業務委託契約は、本見積書と同額の業務委託料にて契約締結をしており、明らかに不当な契約締結である。

      • イ 委員の報酬額設定について
         本業務委託契約は、本業務委託仕様書(資料1)において、万国津梁会議の委員に対する報酬を日額27,000円支払うよう指定している。
         しかし、沖縄県における審議会の委員及び専門委員の報酬については、規則により日額9,300円と定められており(資料5)、同報酬と比して、万国津梁会議の委員を27,000円と高額に設定することに合理的理由は見当たらない。
         したがって、委員報酬を日額27,000円と設定して決定した本委託契約の業務委託料は高額に過ぎ、本業務委託契約は不当な契約締結に当たる。

    • (3) 契約の相手方の選定過程が正当性・妥当性を欠いていること
      • ア はじめに
         本件委託契約については、「県内外・海外で活躍する見識の高い有識者等との外国語対応を含む連絡調整や日程等の調整、幅広いテーマにおける海外の先進事例等の情報収集や会議に係る資料作成等を行うとともに、幅広いテーマに対応する高い能力を有する担当者を複数配置することが求められており、会議を効率/効果的に運営して事業目的を達成するためには、広く公募を行いプロポーザル方式によって選定した業者と随意契約をすることが必要である」として、企画提案募集がなされた(資料6)。
         そして、企画提案応募要領には、参加資格として「(1)当該委託業務を円滑に遂行するために必要な経営基盤を有し、かつ資金等について十分な管理能力を有していること」「(3)類似の会議運営等事業の受託実績があり、想定する委託期間内において別添仕様書に基づく業務内容を遂行する能力を有すること」「(4)県内において業務進捗状況又は業務内容に関する打ち合わせに対して、迅速に対応できる体制を有していること」との要件が定められている(資料7)。
         本コンソーシアムが作成した「令和元年度万国津梁会議設置等支援業務業務実施計画書」(資料8)によれば、子ども被災者支援基金は、本コンソーシアムの代表者として全体調整の役割を担っており、統括責任者、事務局スタッフ(各部門打合せ・資料作成・有識者調整等)、事務局スタッフ(日程調整・旅費計算・各種支払手続き等)、事務局スタッフ(スケジュール管理・帳票類管理・統括責任者補佐)が置かれている。それゆえ、子ども被災者支援基金は、本業務委託契約を履行する上で、最も重要な役割を担っている者として、上記(1)、(3)及び(4)の参加資格要件を当然に満たしていなければならない。
         しかし、以下に述べる通り、子ども被災者支援基金は、上記(1)、(3)及び(4)の参加資格要件を満たしていない。

      • イ 参加資格要件(1)を満たしていないこと
         そもそも、子ども被災者支援基金は一般社団法人として営利目的での設立は許されておらず(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第11条第2項)、その経営基盤及び資金管理能力を財務諸表等により判断することは困難である。
         そして、子ども被災者支援基金は、平成28年7月6日に設立された法人であり、本業務委託契約を締結した令和元年5月24日時点で、わずか3年弱しか事業を行っていない(資料9)。
         したがって、子ども被災者支援基金において、本件委託業務を円滑に遂行するために必要な経営基盤を有すること及び資金等について十分な管理能力を有しているものと認めることはできない。
         よって、子ども被災者支援基金は参加資格要件「(1)当該委託業務を円滑に遂行するために必要な経営基盤を有し、かつ資金等について十分な管理能力を有していること」を満たしていない。

      • ウ 参加資格要件(3)を満たしていないこと
         本業務委託契約の内容は「沖縄21世紀ビジョンの基本理念及び5つの将来像を実現し、新時代沖縄を構築するために、更なる政策の推進が必要であり、有識者等から意見を聴くため「万国津梁会議」を開催し、効果的な議論等を促すための万国津梁会議設置等支援に係る業務を行う」というものである(資料1・本業務委託仕様書)。そして、万国津梁会議は、①人権・平和、②情報・ネットワーク・行政、③経済・財政、④人財(材)育成・教育・福祉・女性、⑤自然・文化・スポーツの分野から複数の会議の設置を予定していることから、本業務委託契約においても、複数の担当者を配置すべきものと指定されている(資料1・本業務委託仕様書)。
         また、当該担当者の主要な役割である「資料収集・資料作成、会議の報告等の取りまとめ」について、「万国津梁会議では、海外を含め見識の高い有識者等を招聘し、知事が示す幅広いテーマ等の議論に資するため、各委員と調整しながら海外等の先進事例等の情報収集や資料作成等を行う」旨指定されている(資料1・本業務委託仕様書)。
         それゆえ、本委託業務の参加資格(3)における「類似の会議運営等事業の受託実績」とは、単独のテーマに対する会議運営等事業を受託した実績をいうのではなく、万国津梁会議が予定している①人権・平和、②情報・ネットワーク・行政、③経済・財政、④人財(材)育成・教育・福祉・女性、⑤自然・文化・スポーツの分野という幅広いテーマに対応した会議運営等事業の受託実績というべきである。そのことは、本業務委託契約に関する企画提案募集の理由において、「幅広いテーマに対応する高い能力を有する担当者を複数配置することが求められており、会議を効率/効果的に運営して事業目的を達成するために、広く公募を行いプロポーザル方式によって選定した業者と随意契約をすることが必要である」(資料6)とされていることからも明らかである。
         ところが、子ども被災者支援基金の目的は「保養の権利を持つすべての子どもたちに支援が行きわたるための活動として、保養プログラムを実施する全国の団体と連携し、保養参加への機会を増やすための助成金の提供と、保養プログラムの質の向上に向けた中間支援活動を行う事」であり、当該目的を達成するための事業として「(1)保養団体に対し資金を助成する事業」「(2)保養プログラムの実施を促進する事業」「(3)保養プログラムにかかわる人材を育成する事業」「(4)保養に関する情報の収集、提供、共有、発信等を行う事業」「(5)保養の質を高める事業」「(6)その他この法人の目的達成のための事業」を行っているにとどまる(資料9)。
         それゆえ、子ども被災者支援基金においては、万国津梁会議が予定している①人権・平和、②情報・ネットワーク・行政、③経済・財政、④人財(材)育成・教育・福祉・女性、⑤自然・文化・スポーツの分野という幅広いテーマに対応した会議運営等事業の受託実績は皆無であると言わざるを得ない。そのことは、子ども被災者支援基金のホームページ 「事業内容」を見ても明らかであり(資料10)、万国津梁会議が予定している上記①~⑤の各分野の内、④の人材育成事業しか類似のものは見当たらない。
         また、子ども被災者支援基金は、平成28(2016)年7月6日に設立された法人であり、わずか3年足らずしか事業実績はない(資料9)。
         子ども被災者支援基金のホームページ上の「お知らせ」欄を見ても、「2017-01-20 2017年パートナーシップ説明会開催のお知らせ」「2017-02-28自然体験活動における子ども達に対する性的虐待事案に関して」「2018-02-12 2018年度パートナーシップ登録および助成金説明会開催のお知らせ」「2018-10-25 11月17 ・ 18 日「保養の未来を創る、学びと気づきの研修会丿開催のお知らせ」「2019-01-14新規事業展開のための沖縄事務所開設」の5項目しか存在しない(資料:10)。すなわち、子ども被災者支援基金は、万国津梁会議が予定している幅広い分野に関する会議運営等事業はおろか、自身の目的である子ども達の保養プログラムに関する事業でさえ、ほとんど実績は認められない。
         したがって、子ども被災者支援基金において、万国津梁会議が予定している幅広い分野に関する会議運営等事業の実績は一切認められないのであるから、本業務委託契約に基づぎ業務内容を遂行する能力を有しているとは到底認めることはできない。
         よって、子ども被災者支援基金は参加資格要件「(3)類似の会議運営等事業の受託実績があり、想定する委託期間内において別添仕様書に基づく業務内容を遂行する能力を有すること」を満たしていない。

      • エ 参加資格要件(4)を満たしていないこと
         前述の通り、子ども被災者支援基金は平成28年7月6日に設立されたばかりの法人であり、その事業実績はわずかである。また。その主たる事務所の所在地は「山形県寒河江市」、子ども被災者支援基金の代表理事である鈴木理恵氏の住所地は「愛知県愛西市」といずれも沖縄県外であるから(資料9)、沖縄県内において業務進捗状況・業務内容に関する打合せに対して「迅速に」対応することは不可能である。
         また、子ども被災者支援基金は、そのホームページ上で、「新規事業展開のため」と称して、本年(2019年)1月14日に沖縄事務所を開設した旨掲載しているが(資料10)、沖縄事務所における事業実績は一切ない。そして、沖縄事務所はアパートの一室に過ぎず、沖縄県職員もその実態を把握していないなど(資料13・2頁)、沖縄事務所の運営状況は極めて不透明である。
         さらに、たった一名しか居ない沖縄事務所の職員であった徳森氏は、本年9月30日付で退職しており(資料15・5頁)、業務進捗状況・業務内容に関する打合せに対して「迅速に」対応する体制が整っていないことは明らかである。
         したがって、子ども被災者支援基金は参加資格要件「(4)県内において業務進捗状況又は業務内容に関する打ち合わせに対して、迅速に対応できる体制を有していること」を満たしていない。

      • オ プロポーザル方式による選定とはいえないこと
         上記の通り、子ども被災者支援基金は、(1)、(3)及び(4)の参加資格要件をいずれも満たしていないが、県は参加資格要件を十分に吟味せずに、子ども被災者支援基金を代表者とする本コンソーシアムとの間で本業務委託契約を締結するに至っている。
         このように参加資格要件のチェックが杜撰となってしまったのは、プロポーザル方式による選定がきちんと行われていないことに原因がある。
         そもそも本業務委託契約は、「県内外・海外で活躍する見識の高い有識者等との外国語対応を含む連絡調整や日程等の調整、幅広いテーマにおける海外の先進事例等の情報収集や会議に係る資料作成等を行うとともに、幅広いテーマに対応する高い能力を有する担当者を複数配置することが求められており、会議を効率/効果的に運営して事業目的を達成するためには、広く公募を行いプロポーザル方式によって選定した業者と随意契約をすることが必要である」との理由から企画提案募集がなされたのである(資料6)。それゆえ、少なくとも①見識の高い有権者等との外国語対応を含む連絡調整が行える体制づくり、②幅広いテーマにおける海外の先進事例等の情報収集及び資料作成能力、③幅広いテーマに対応する高い能力を有する複数の担当者の実績などについて、最低でも2業者(ないしコンソーシアム)から企画提案をさせた上で、比較検討して契約の相手方を選定する必要があった。
         しかし、企画提案したのは本コンソーシアムのみであり、提案内容を比較検討することなく、契約の相手方が選定されるに至っている(資料17・3頁)。
         しかも、本コンソーシアムの企画提案内容は、「「万国津梁会議のために私たちができること~「誰一人取り残さない」優しい沖縄社会とSDGs~」などと抽象的なスローガンを掲げるにとどまり、①見識の高い有権者等との外国語対応を含む連絡調整が行える体制づくり、②幅広いテーマにおける海外の先進事例等の情報収集及び資料作成能力、③幅広いテーマに対応する高い能力を有する複数の担当者の実績などについて、何ら具体的な提案はなされていない(資料11)。
         このように、本コンソーシアムは、本業務委託契約に必要不可欠な企画提案(プロポーザル)を行っておらず、他者との比較検討もなされないまま、契約の相手方と選定されるに至っており、もはや本業務委託契約の相手方は、正当・妥当なプロポーザル方式による選定がなされたとはいえない。
         なお、本業務委託契約締結の前日である5月23日に、県知事は子ども被災者支援基金の代表者である鈴木理恵氏及び同沖縄事務所担当者である徳森氏らと会食しており(資料19・7~8頁)、本業務委託契約の相手方については、プロポーザルによる選定ではなく、初めから子ども被災者支援基金に決められていた疑いさえある。実際、子ども被災者支援基金は、令和元年4月17日に県が本業務委託契約について公募するに当たって実施した「万国津梁会議設置等支援業務委託募集説明会」にすら参加しておらず(資料12)、適切な企画提案を行っていない。

      • カ 小括
         以上の通り、子ども被災者支援基金は、上記(1)、(3)及び(4)の参加資格要件をいずれも満たしていない。また、本業務委託契約は、広く公募を行いプロポーザル方式により相手方を選定する必要があったにもかかわらず、本コンソーシアムからは適切な企画提案(プロポーザル)がなされておらず、他者との比較検討もなされないまま、本コンソーシアムが契約の相手方と選定されている。
         したがって、県は、子ども被災者支援基金が代表者である本コンソーシアムが参加資格要件を満たさしていないにもかかわらず、本コンソーシアムの企画提案を十分に吟味せず、また、他者との比較検討も行わないまま、本コンソーシアムとの間で本業務委託契約を締結したものであるから、本業務委託契約は受注者の選定過程において、正当性・妥当性を欠くものであり、同契約締結は違法・不当な契約締結に当たる。

    • (4) まとめ
       以上の通り、本業務委託契約は、そもそも業務委託すべき性質の業務ではないことから契約締結の必要性なくして締結されたものであり、その契約内容についても業務委託料が不当に定められたものであり、また、契約の相手方の選定過程においても正当性・妥当性を欠くものであるから、本業務委託契約の締結は違法・不当な契約締結に当たる。

  2. 違法・不当な公金の支出について
     県から本コンソーシアムに対しては、令和元年6月10日に金722万円、同年8月6日に金722万円、同年9月4日に金722万円(合計金2166万円)が支払われている(資料2の1~3)。
     上述した通り、本業務委託契約締結は違法・不当な契約締結であるから、同契約に基づいて本コンソーシアムに対して支払われた合計金2166万円は、違法・不当な公金の支出に当たる。
     仮に、本業務委託契約締結が違法・不当な契約締結に当たらないとしても、着手時を除いた業務委託料の概算払いについては「委託事業の進捗度合いに応じて」支払わなければならない(資料1・本業務委託契約第16条第:1項(2)・第2項)。
     本業務委託契約は、そもそも5つの分野での会議を年2回、合計10回の会議を予定していたものであるが、万国津梁会議については米軍基地問題に関する会議が2回、児童虐待に関する会議が2回、SDGsに関する会議が1回、合計5回しか会議が開催されていない(資料16・6頁)。そして、本コンソーシアムから県に対しては、業務報告書その他の成果物は一切提出されていない。
     したがって、上記支払の内、令和元年8月6日に支払われた金722万円、同年9月4日に支払われた金、722万円、合計1444万円については進捗度合いに応じた支払とは認められないから、違法・不当な公金の支出に当たる。
     なお、県文化観光スポーツ部長は、議会答弁において「契約は5分野についてそれぞれ10回行うというところで契約を行っている……実際に少ない回数であるというようなことがございましたら、しっかりと精算でその辺は処理することとしたい」と述べている(資料1 4 ・ 1 0頁)。

  3. 結論
     よって、請求者らは、沖縄県監査委員に対し、監査を求め、県知事玉城康裕が本業務委託契約を解除した上で本コンソーシアムに対し金2166万円の返還を求めること、予備的に、県知事玉城康裕が本コンソーシアムに対し金1444万円の返還を求めることを勧告することを求める。

上記のとおり地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え必要な措置を請求します。


以 上


監査請求結果監査請求結果

監査請求結果

万国津梁会議設置等支援業務委託に係る住民監査請求の結果報告について

 

第1 監査の請求
  1. 請求書の交付
    令和元年12月23日
  2. 請求人
    4人
  3. 請求の要旨
    請求の要旨は次のとおりである。
    沖縄県知事(以下「知事」という。)に対し、次の勧告を行うよう求める。
    • (1) 令和元年度万国津梁会議設置等支援業務委託契約(以下「本業務委託契約」という。)は、契約内容及び契約の相手方である受注者の選定過程において正当性・妥当性を欠くものであり、同契約締結は違法・不当な契約締結に当たるから、契約を解除すること。
    • (2) 本業務委託契約第16条第1項・第2項に基づき、令和元年6月10日に金722万円、同年8月6日に金722万円、同年9月4日に金722万円(合計金2,166万円)が県から万国津梁会議設置等支援業務スタートチーム(以下「本コンソーシアム」という。)に対し支払われているが、本業務委託契約は違法・不当な契約締結であるから、当該2,166万円の支払は、違法・不当な公金の支出に当たり、一般社団法人A(以下「A」という。)を代表者とする本コンソーシアムに対し金2,166万円の返還を求めること。予備的に、本業務委託契約が違法・不当な契約締結に当たらないとしても、着手時を除いた業務委託料の概算払については「委託事業の進捗度合いに応じて」支払わなければならないところ、上記支払の内、1,444万円については進捗度合いに応じた支払がなされていないことから、違法・不当な公金の支出に当たるので、知事が本コンソーシアムに対し金1,444万円の返還を求めること。
  4. 請求の理由
    請求の理由を要約すると次のとおりである。
    • (1) 違法・不当な契約締結について
      • ア 契約締結自体に正当性・妥当性がないこと
         令和元年度万国津梁会議設置等支援業務委託(以下「本業務委託」という。)に係る契約書(以下「契約書」という。)添付の仕様書(以下「契約仕様書」という。)に記載された業務内容の主なものは県職員が対応可能で、その方が効率的・効果的に行えることから委託の必要性は全くない。また、実際に本コンソーシアムが作成した資料は一切ないことから不当である。
      • イ 契約内容が正当性・妥当性を欠いていること
        • (ア) 本コンソーシアムが提出した見積書の内容には「委員日当」等不必要な費用の計上や本業務委託の企画提案仕様書にそぐわない内容があるが、県は全く精査しておらず不当である。
        • (イ) 委員の報酬額設定について単価を日額27,000円にしているが、これは、沖縄県特別職に属する非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する規則(昭和47年沖縄県規則第111号。以下「規則」という。)で定めた日額単価9,300円よりも高額であり、当該単価設定の合理的理由は見当たらず不当である。
      • ウ 契約の相手方の選定過程が正当性・妥当性を欠いていること
        • (ア) 本業務委託は公募を行いプロポーザル方式によって選定した本コンソーシアムと随意契約しているが、県が企画提案応募要領で設けた参加資格要件を本コンソーシアムの代表であるAは満たしていない。
        • (イ) 複数の業者による企画提案を比較検討する必要があったのに、応募は本コンソーシアム1者だけで、本コンソーシアムの企画提案内容は何ら具体的な提案がなされていない。
    • (2) 違法・不当な公金の支出について
      • ア 本業務委託の契約締結は違法・不当であるから、同契約に基づき支出された2,166万円は違法・不当な公金の支出である。
      • イ 本業務委託の契約が違法・不当でないとしても、着手金を除いた委託料の概算払は契約書第16条第1項第2号及び第2項により「委託事業の進捗度合いに応じて」支払わなければならないところ、万国津梁会議は5分野の会議を計10回開催する計画のうち5回しか開催されていない。また、本コンソーシアムから県に対して業務報告書その他成果物は一切提出されていないので、令和元年8月及び9月に支払われた計1,444万円は違法・不当な公金の支出である。

第2 請求の受理
 本件請求は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項及び第2項の所定の要件を具備しているものと認め、令和2年1月10日付けでこれを受理した。

第3 監査の実施
  1. 監査対象事項
    知事が、本業務委託契約の締結及び公金の支出を適正に行ったかにっいて監査を実施した。
  2. 監査対象機関
    沖縄県文化観光スポーツ部交流推進課(以下「交流推進課」という。)を監査対象機関とした。
  3. 請求人の証拠の提出及び陳述
    地方自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対し、令和2年1月24日に陳述会を開催する旨を同月14日に通知したが、同月21日に請求人から陳述をしない旨の連絡を受けた。また、新たな証拠書類は提出されなかった。
  4. 関係職員の陳述
    地方自治法第242条第7項の規定に基づき、令和2年1月24日に沖縄県文化観光スポーツ部(以下「文化観光スポーツ部」という。)の関係職員の陳述を聴取した。その際、同項の規定に基づく請求人の立会いはなかった。

第4 監査の結果
  1. 事実関係の確認
    文化観光スポーツ部の関係職員からの聴取及び関係書類に基づいて把握した事実は、おおむね次のとおりである。
    • (1) 万国津梁会議設置等支援業務の事業趣旨
       沖縄21世紀ビジョンの基本理念及び5つの将来像の実現を促進し、新時代沖縄の構築を図っていくため、有識者等から意見を聴取する万国津梁会議を設置した。
       知事は、「人権・平和」、「情報・ネットワーク・行政」、「経済・財政」、「人財育成・教育・福祉・女性」、「自然・文化・スポーツ」の5っの分野及び必要な事項について万国津梁会議を組織し、意見を求めるとともに、それぞれに組織する会議が知事に意見を述べることができることとなっている。
       現在、「人権・平和」の分野として「米軍基地問題」、「情報・ネットワーク・行政」の分野として「SDGs」、「人財育成・教育・福祉・女性」の分野として「児童虐待」に関する会議が各テーマの所管課を中心に進められており、交流推進課においては同会議の設置等支援に係る業務を行っている。
    • (2) 本業務委託契約の内容
       本業務委託契約の契約仕様書において、業務内容は、会議等の運営支援、担当者の配置、資料収集、資料作成、会議の報告等のとりまとめ、会議のあり方等、成果物の作成、その他県が指示する事項に関することとなっている。
       各テーマ毎に複数の所管課をまたがって発生するこれらの業務を、交流推進課において一括して委託している。
    • (3) 本業務委託契約締結の手続
       県は、万国津梁会議設置等支援業務を実施するに当たり、平成31年4月8日付けの予算執行伺いにおいて契約方法を地方自治法第234条第2項及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第167条の2第1項第2号の規定に基づく随意契約とし、随意契約の相手方は公募を行いプロポーザル方式により選定することを定め決裁し、同月12日にホームページにおいて委託業務の企画提案仕様書を示して公募を行った。同月17日に説明会を開催したところ、説明会への出席者は6者であった。その後、令和元年5月10日に企画提案応募申請が1者あり、委託候補事業者の選定(第1次審査)を同月14日に行ったところ要件を満たしていることが確認され、同月15日に本コンソーシアム宛て通知を行った。
       提案応募要領に係る参加資格については、同要領に定められた11の書類の内容を、代表者とするAのみでなく、本コンソーシアム4者の総合的な実績により要件を満たすものと判断されていた。
       また、同月17日に、委託候補事業者の第2次審査(プレゼンテーション)を行い、全審査員それぞれの評価点の合計点が基準を満たしたため委託先として決定し、同日、本コンソーシアム宛て通知を行っている。
       なお、契約締結に当たっては、同月24日に契約金額の100分の10に相当する2,407,700円を契約保証金として、本コンソーシアムから受領している。
    • (4) 本業務委託の業務実施計画
      • ア 本業務委託契約後に、県と協議した上で本コンソーシアムから提出された業務実施計画書では、年間を通した業務の実施が計画されていた。
      • イ 本業務委託の業務実施計画について、年度途中の変更はない。
    • (5) 本業務委託の支出手続
       支出については、契約書第16条第1項第1号において本契約締結後、委託業務着手時に業務委託料の10分の3に相当する額及び同項第2号において委託事業の進捗度合いに応じて業務委託料の10分の9に相当する額を請求出来るものと定めている。支払時期については、支出負担行為決裁時に支払計画として第1回目は令和元年5月に7,220,000円、第2回目は同年に6月7,220,000円、第3回目は同年7月に7,220,000円、第4回目は令和2年3月に2,417,000円と定めた。これにより、第1回目令和元年6月10日7,220,000円、第2回目同年8月6日7,220,000円、第3回目同年9月4日7,220,000円を支払っている。
       支出に当たっては、3件の支出調書にそれぞれ、請求書のほか、予算執行伺い、支出負担行為書、予定価格調書、契約書、支払計画の原本又は写しが添付され、執行機関及び出納機関の決裁を受けていた。
    • (6) 本業務委託契約事務の進捗状況確認
       業務内容の進捗状況を確認できる書類は作成されていなかった。
       第3回目の支払がなされた令和元年9月4日時点で万国津梁会議の開催数は4回であった。
       文化観光スポーツ部の関係職員が説明した第2回目及び第3回目の支払が進捗度合いに応じたものだとする理由は下記のとおりである。
      • ア 万国津梁会議は、万国津梁会議設置要綱(以下「要綱」という。)に定められた5分野及び必要な事項について知事が組織することとなっており、契約当初に全体日程はあらかじめ決定してなかったこと、日程及び議事は委員と調整しながら随時決定していく必要があること、幅広いテーマの議論のため情報収集の必要があること、先行してテーマが決定していた3分野以外に新たなテーマを立ち上げる可能性があり、業務運営等の先行きが見通せない特殊性を持つものである。
      • イ 支出日以後に実施された会議も含めて、令和2年1月24日までに、米軍基地問題に関する万国津梁会議が3回、児童虐待に関する万国津梁会議が2回、SDGsに関する万国津梁会議が2回の計7回が開催されている。また、円卓会議が1回開催されており、いずれも円滑に運営がなされていることを確認した。
  2. 監査委員の意見
     地方自治法第242条第8項の規定による住民監査請求に基づく監査及び勧告の決定は、監査委員の合議によるものとされている。
     監査委員は、本件請求について慎重に検討してきたが、監査委員3名のうち2名は「本件請求のうち、予備的に主張された部分については理由がある。」とする意見、1名は「本件請求は理由がない。」とする意見に分かれたため、意見の一致を見ることができず合議不調となった。
     なお、参考として監査の結論についての意見を述べておく。
    • (1) 本件請求のうち、予備的に主張された部分については理由があるとする監査委員の意見
      • ア 違法・不当な契約締結について
         監査の結果、本業務委託契約に係る交流推進課の会計処理において、契約については一連の手続を適正に行っていることを確認した。請求人が主張する各請求理由に対する判断は、下記のとおりであり、違法・不当な契約締結であるとはいえない。
        • (ア) 契約締結自体に正当性・妥当性がないこと。
          • a 請求人は、本業務委託に係る契約仕様書に記載された業務内容の主なものは県職員が対応可能で、その方が効率的・効果的に行えることから委託の必要性は全くないとした部分については、委託の必要性は、専門性、効率性、業務負担の軽減の観点から判断されるものと思料する。
          • b 請求人は、実際に本コンソーシアムが作成した資料は一切ないことから不当であるとしている。しかし、本コンソーシアムが作成した議事録や会議資料が確認された。
        • (イ) 契約内容が正当性・妥当性を欠いていること。
          • a 請求人は、本コンソーシアムが提出した見積書の内容には「委員日当」等不必要な費用の計上や本件業務委託の企画提案仕様書にそぐわない内容があるが、県は全く精査しておらず不当であると主張している。
             しかし、見積書の精査については、企画提案時の見積書をそのまま採用するのではなく、契約時には実際の業務内容を勘案し調整されていたものである。
          • b 請求人は、委員の報酬額設定について単価を日額27,000円にしているが、これは規則で定めた日額単価9,300円よりも高額であり、当該単価設定の合理的理由は見当たらず不当であると主張している。しかし、万国津梁会議の委員は、規則の対象となる職員に該当しないものであるとともに、委員の職責を考慮して設定されたものである。
        • (ウ) 契約の相手方の選定過程が正当性・妥当性を欠いていること。
          • a 請求人は、本業務委託は公募を行いプロポーザル方式によって選定した本コンソーシアムと随意契約しているが、県が企画提案応募要領で設けた参加資格要件を本コンソーシアムの代表であるAは満たしていないと主張している。
             しかし、参加資格要件については、交流推進課の第1次審査において、本コンソーシアムを構成する4者のいずれかが要件を満たしていると確認されていることから、適正に処理されていたと認める。
          • b 請求人は、複数の業者による企画提案を比較検討する必要があったのに、応募は本コンソーシアム1者だけで、本コンソーシアムの企画提案内容は何ら具体的な提案がなされていないと主張している。
             しかし、本業務委託契約は、沖縄県随意契約ガイドラインに沿って随意契約がなされている。また、提案された内容が具体的であるかの判断は、公表された企画提案応募要領に示された適合性、実効性、具体性、妥当性及び総合評価の評価基準に沿って審査委員会において判断されている。
      • イ 違法・不当な公金の支出について
        • (ア) 請求人は、本業務委託の契約締結は違法・不当であるから、同契約に基づき支出された2,166万円は違法・不当な公金の支出であると主張している。
           しかし、上記(1)アの判断のとおり本業務委託契約の締結は違法・不当な契約締結ではないことから、当該主張は容れられない。
        • (イ) 請求人は、本業務委託の契約が違法・不当でないとしても、着手金を除いた委託料の概算払は契約書第16条第1項第2号及び第2項により「委託事業の進捗度合いに応じて」支払わなければならないところ、万国津梁会議は5分野の会議を計10回開催する計画のうち5回しか開催されていない。また、本コンソーシアムから県に対して業務報告書その他成果物は一切提出されていないので、令和元年8月及び9月に支払われた1,444万円は違法・不当な公金の支出であると主張している。
           概算払に係る進捗度合いの確認について、文化観光スポーツ部の関係職員は「進捗管理については、担当が全ての会議を現場で確認するとともに、打合せへの対応状況を確認している。また、概算払については、3分野で仕様を超える12回の会議の開催が見込まれたこと、契約当初に予定されていなかった円卓会議の開催が急遽決定されたこと等、当初想定されていないスキームで急遽対応する必要性が生じたこと等を勘案し、予測できない事態にも柔軟かつ機動的な対応ができるよう、各会議の円滑な進捗を確認した上で、支払計画に基づき概算払を行ったものである。」と説明している。
           しかし、契約書第16条によると、本コンソーシアムは進捗度合いに応じて概算払を請求できることになっており、このため必然的に進捗度合いを示す書類を作成して請求書に添付して概算払を請求することになるが、進捗度合いを示す書類はないこと及び県は進捗度合いについてどのように客観的に確認し、概算払の上限9割に達する支出を行うことが適当と判断したことを証する文書等がなければ、「委託事業の進捗度合いに応じて」支払ったことにはならない。なお、支出負担行為の決裁時に作成した支払計画は、第2回目及び第3回目の概算払を正当化する根拠にはならない。
           したがって、第2回目及び第3回目1,444万円の支出は不当である。
      • ウ 講ずべき措置について
         この点については、2委員の意見が分かれ、その内容は次のとおりである。
        • (ア) 返還を求めることとする委員の意見
           第2回目及び第3回目1,444万円の支出は不当であるから、知事は、本コンソーシアムに対して支出済額1,444万円の返還を求めること。
        • (イ) 返還を求めるまでには至らないとする委員の意見
           第2回目及び第3回目の支出が不当であったとは認められるものの、当該支出済額の返還を求めるべきかについては、契約期間は令和2年3月31日までで事業執行中であり、万国津梁会議は既に7回開催され、今後2回会議開催が予定されていることから、令和元年9月4日時点では過大な支払であったとしても、既に相当額が事業遂行の費用として充てられたと考えられる。当該支出済額を一旦返還させた後に再度進捗度合いに応じた額を概算払することは、事務執行上合理的ではない。
           また、本業務委託契約書において業務完了後に検査を行い委託料の額を確定し、支払済委託料が確定額を超過している場合は返還を命ずることが定められている。
           以上のことから、支出済額の返還を求めるまでには至らないと思料する。
      • エ その他意見
         本件は、業務開始時において、万国津梁会議の運営にかかる全体日程及び議事内容の不透明性、会議テーマの一部の未調整、情報収集の遅れ等により事務手続に混乱が見られ、同事務事業の熟度、計画性及び精度に疑問が残るところである。
         このような状況で、県が委託契約を行い事業を実施したことで、県民から委託の必要性がない、契約内容が正当性・妥当性を欠いている、違法・不当な公金の支出であると疑念を持たれることになったと思料する。これを真摯に受け止め改善していただきたい。
         県の支出は、債務確定後に支出されるいわゆる後払いが原則であり、概算払はこの例外的支出方法となっていることから慎重な事務手続が求められる。このため、本件においても、委託契約書において「委託事業の進捗度合いに応じて」概算払ができる定めになっているところである。しかしながら、県においては概算払の支出時において進捗度合いを明らかに確認できる文書等は作成されておらず根拠のない不透明な支出となっている。
         このように著しく透明性に欠けた支出は県民の理解を得られるものではなく、今後行われる同事業の精算については透明性のある手続で県民に対する説明責任を果たしていただきたい。
         また、公募型プロポーザル方式の事務手続について各部局等においては、各々の慣例に基づいた運用がなされ、事案毎に異なった取扱いとなっているため、全庁的に統一性を確保するため事務マニュアルを定める必要があると思料される。
         今後、内部統制を強化し、最小の経費で最大の効果を上げるという行政運営の基本原則にのっとり、様々な仕組みを通して、より一層確かな事業管理及び適切な事務処理に努めていただきたい。
    • (2) 請求には理由がないとする監査委員の意見
      • ア 違法・不当な契約締結について
         上記(1)アと同じである。
      • イ 違法・不当な公金の支出について
        • (ア) 請求人は、本業務委託の契約締結は違法・不当であるから、同契約に基づき支出された2,166万円は違法・不当な公金の支出であると主張している。
           当該主張にっいては上記(1)イ(ア)と同じである。
        • (イ) 請求人は、本業務委託の契約が違法・不当でないとしても、着手金を除いた委託料の概算払は契約書第16条第1項第2号及び第2項により「委託事業の進捗度合いに応じて」支払わなければならないところ、万国津梁会議は5分野の会議を計10回開催する計画のうち5回しか開催されていない。また、本コンソーシアムから県に対して業務報告書その他成果物は一切提出されていないので、令和元年8月及び9月に支払われた1,444万円は違法・不当な公金の支出であると主張している。
           概算払に係る進捗度合いの確認について、文化観光スポーツ部の関係職員は「進捗管理については、担当が全ての会議を現場で確認するとともに、打ち合わせへの対応状況を確認している。また、概算払については、3分野で仕様を超える12回の会議の開催が見込まれたこと、契約当初に予定されていなかった円卓会議の開催が急遽決定されたこと等、当初想定されていないスキームで急遽対応する必要性が生じたこと等を勘案し、予測できない事態にも柔軟且つ機動的な対応ができるよう、各会議の円滑な進捗を確認した上で、支払計画に基づき概算払を行ったものである。本委託業務において概算払を行うにあたり、確認書等は作成していないが、確認書等の作成については、県の運用上求められているものではないこと、契約条項として規定していないことから、その作成は義務とはいえず、執行手続自体は県の運用に沿った適正なものであると考える。」と説明している。
           また、概算払制度及び本業務委託契約について、文化観光スポーツ部の関係職員は「概算払は、債務の履行期限前に未確定の債務金額を概算をもって支払う制度であり、当該債務が確定後、証憑書類を確認し、精算する性質のもので、土木・農林分野の工事請負契約等における既済部分について、完成前にその部分の代価の一部を出来高に応じて支出する部分払とは異なる制度である。
           委託契約については、委任的性格を有するものと、請負的性格を有するものに分けることができる。民法(明治29年法律第89号)第643条が根拠法令である委任は、県が法律行為を委託する契約で、仕事の処理に対して対価を支払う契約であり、契約額を上限に業務の実施に要した経費を支払うもので、精算条項を設けた概算契約である。民法第656条が根拠法令である準委任は、県が法律行為以外の事務等を委託する契約で、委任に関する規定が準用される。民法第632条が根拠法令である請負は、相手方がある仕事を完成することを約し、県がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約することでその効力を生じる契約であり、精算条項のない確定契約である。土木・農林分野の委託業務は請負が多い一方、本業務委託契約は準委任に該当する。両者では支出方法に違いがあり、すなわち、請負契約については、契約時に債務金額が確定しており、契約不履行その他の事由によって客観的に金額に異動のある場合を除いては、精算を必要としないことから、前金払を行っており、また既済部分について出来高に応じた部分払を行うものである。本契約のような準委任契約を含む委任契約については、契約時に債務金額が確定しておらず、額の確定時に精算を行うことから、必ずしも出来高に応じた概算払を行うものではない。」と説明している。
           以上から、本業務委託契約の支出手続は、県の運用に沿った適正なものであったと認める。
           万国津梁会議は、要綱に定められた5分野及び必要な事項について知事が組織することとなっており、契約当初に全体日程はあらかじめ決定してなかったこと、日程及び議事は委員と調整しながら随時決定していく必要があること、幅広いテーマの議論のため情報収集の必要があること、先行してテーマが決定していた3分野以外に新たなテーマを立ち上げる可能性があり、業務運営等の先行きが見通せない特殊性を持つものである。
           本業務委託契約書第16条第1項第2号で「委託事業の進捗度合いに応じて」と記載したことは一部県民の誤解を招くものではあったが、法令に基づいて概算払がなされており、最終的に精算がなされる契約である。本業務委託契約書において業務完了後に検査を行い委託料の額を確定し、支払済委託料が確定額を超過している場合は返還を命ずることが定められていることから、第2回目及び第3回目1,444万円の支出は違法・不当ではない。

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